時を重ねる沖縄の酒

古酒(クース)に込められた歴史と文化

明日9月4日は「古酒(クース)の日」です。

「ク(9)ース(4)」という語呂合わせから、古酒の日とされています。

沖縄を代表するお酒といえば泡盛ですが、その中でも長い年月をかけて育てられたものが「古酒(クース)」です。

古酒は、ただ長い間保存しておけばいいというものではありません。

そこには沖縄の長い歴史が関わっています。

1.古酒(クース)ってどんなお酒?

古酒とは、長い年月をかけて貯蔵・熟成させた泡盛のことです。

現在の表示ルールでは、泡盛を3年以上貯蔵したものが「古酒」とされています。年月を重ねることで、泡盛の香りや味わいは変化し、よりまろやかで芳醇な風味になっていきます。(国税庁)

沖縄では、泡盛を甕や瓶に入れて熟成させることを「寝かせる」と表現することがあります。

「何年ものの古酒」という言葉を聞くと、ただ長い年月が経ったお酒を想像するかもしれません。

しかし、沖縄の古酒にはもう一つ大切な特徴があります。

それが「仕次ぎ」です。

2.古酒を育てる「仕次ぎ」

「仕次ぎ」とは、古酒の一部を取り出し、そこへ別の泡盛を補充する方法です。

昔の名家では、年代の違う古酒を入れた甕を複数用意していたと言われています。

一番古い甕から酒を取り出したら、その分を少し若い古酒から補充する。

そして、その甕にできた空きをさらに若い古酒から補充する…

このように、古い酒から若い酒へと順番に仕次ぎを行いながら、古酒を育てていったのです。

つまり古酒は、「完成したお酒を大切に保存する」だけではなく、「手をかけながら次の世代へ繋いでいく」ものでもあったのです。

3.戦前の沖縄には、100年、200年の古酒もあった

古酒の歴史を調べていくと、驚くような話があります。

戦前の沖縄には、100年、200年といった非常に長い年月を重ねた古酒が数多く存在していたと言われています。

それらは家族で大切に育てられ、名家では家宝として扱われることもあったそうです。

親の代から受け継いだ古酒をさらに育て、その古酒をまた子や孫へ渡していく。

そうやって何十年、何百年という時間が甕の中に積み重なっていったのでしょう。

ところがその歴史は、沖縄戦によってそのほとんどが失われてしまいました。

沖縄県酒造組合によると、現在公表されている中では、識名酒造の約150年ものといわれる古酒が現存する最古の古酒になるそうです。

長い年月を生き延びた古酒は、単なる「古いお酒」ではありません。

そこには、戦前の暮らしと、古酒を育ててきた人々の時間そのものが刻まれているのかもしれません。

4.もう一度、100年古酒を育てる

戦争によって一度大きく途切れてしまった沖縄の古酒文化。

しかし現在、再び長い年月をかけて古酒を育てようという取り組みが行われています。

仕次ぎの技術を受け継ぎ、何十年、そして100年先を見据えて泡盛を貯蔵している人たちもいます。

100年後にその古酒を飲むのは、今を生きている私たちではないかもしれません。

もしかすると孫やひ孫の世代かもしれません。

そう考えると、古酒を育てるということは、とても不思議な時間の贈り物にも思えてきます。

我が家でも、子供の誕生に合わせて甕の泡盛を買い、古酒を育てています。

子供が二十歳を迎える頃には古酒も20年。

子供の成長と一緒に、甕の中の泡盛も少しずつ熟成していきます。

20歳になった時に一緒に味わうことができれば、それは単なるお酒ではなく、その子が生まれてから20年という時間を一緒に重ねてきたものになりますね。

5.古酒は「時間」を受け継ぐ

古酒について調べていると、何度も「受け継ぐ」という言葉に行き着きます。

戦前の沖縄では、親から子へ、子から孫へと古酒が受け継がれてきました。

しかし沖縄戦によってその多くが失われてしまいました。

そして今、再び古酒を育て、未来へ残そうとしている人たちがいます。

古酒は、甕の中でただ眠っているだけのお酒ではありません。

そこには育ててきた人の時間があり、家族の記憶があり、沖縄の歴史があります。

何年後、何十年後に開けるのかは、今はまだわからない。

それでも、今日から少しずつ時間を重ねていく。

そんな古酒の文化は、沖縄の「受け継ぐ」という心を象徴しているようにも思います。

9月4日の「古酒の日」。

今年は一杯の泡盛を味わいながら、その中に流れている長い時間にも少し思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

私はもちろん、古酒をいただきます!


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