ガスコンロの傍らに白い花瓶や盃。これが竈の神様『ヒヌカン(火の神)』

▼ガスコンロの傍らに白い花瓶や盃。これが竈の神様『ヒヌカン(火の神)』

沖縄の家庭にお邪魔すると、台所やガスコンロのそばに白い花瓶や盃などが供えられていることがあります。これが本土では見られない風習『ヒヌカン』です。ヒヌカンは竈の神様で、かつては竈の後ろに3つの石を置き祀っていました。沖縄では土地だけではなく、トイレや床の間など、家の到るところに神様がいると考えられており、中でもヒヌカンは様々な家の神様の中でもトップに位置づけられている神様。まさしく一家の『守り神』で、本土の神棚に相当するものです。

台所に香炉、塩、米、お酒、花瓶をお供えするのが一般的な形で、器は全て白で統一されています。これは白が神様の衣装の色とされていることから来ているそうです。さらに、ヒヌカンを祀るのは代々その家の女性のみで、他の人が拝むのはタブーとされています。

また、ヒヌカンは守り神としての役割の他、『ウトゥーシドゥクル(お通し所)』という機能を併せ持つとされています。これは、ヒヌカンを拝めばその他の神様に取り次いでくれるという意味合いがあります。

一家の守り神ということで、毎朝お線香を立てたり、手を合わせる家もありますが、主に旧暦の一日と十五日に、香炉にお線香を12本か15本を立て、ウブク(お米のご飯を小さな器に山盛りにしたもの)を3つ供え、一家の繁栄や家族の無事を祈願します。その他、家族の病気回復、旅の安全などもお祈りするだけでなく、出産や結婚など、家族の節目があるたびにその都度報告をします。

『ヒヌカン』は拝みを大切にする沖縄の文化を、身近に感じさせる風習でもあるのです。

close Modal