春の風に乗って集う。沖縄の「シーミー」と、変わりゆくお墓のカタチ

春の風に乗って集う。沖縄の「シーミー」と、変わりゆくお墓のカタチ

沖縄にうりずん(初夏)の風が吹き始める頃、週末になると各地の霊園や墓地周辺で渋滞が発生します。沖縄の春の風物詩、「清明祭(シーミー)」の季節の到来です。

親戚一同がお墓の前にブルーシートを広げ、三枚肉やかまぼこ、天ぷらなどがぎっしり詰まったご馳走を囲んで賑やかに語り合う。他県の方からすると「お墓の前でピクニック?」と驚かれるかもしれませんが、沖縄の人々にとってシーミーはお正月やお盆と並ぶ、一年で最も大切な家族行事の一つです。お母さんたちが数日前から買い出しに走り、当日の朝早くから重箱の準備に追われる姿も、この時期ならではの活気ある光景と言えるでしょう。

沖縄のお墓といえば、家の屋根のような形をした立派な「破風墓(はふばか)」などを思い浮かべる方も多いはずです。これらは「門中(むんちゅう)」と呼ばれる、父系の血縁集団を単位とした大きなお墓であることが一般的です。何十人、時には百人規模の親族が集まることもあり、お墓は単に静かに手を合わせる祈りの場ではなく、近況を報告し合い、一族の絆を確かめ合う大切な「交流の場」としての役割を長年担ってきました。

しかし近年、そんなシーミーの風景にも少しずつ変化が見られます。背景にあるのは、少子高齢化や核家族化といった現代社会の波です。進学や就職で県外へ移住する若者も増え、巨大な門中墓を誰が引き継ぐのかという「お墓の継承問題」が、40代から60代の多くのご家庭で切実な悩みとなっています。

特に、沖縄の伝統的なコンクリート造りの大きなお墓は、強い日差しや台風に晒されて老朽化が進みやすく、定期的な補修が欠かせません。さらに、山中にある広大な敷地の草刈りや掃除は、高齢化した親世代にとって大変な重労働です。そのため、最近では遠くの大きなお墓から思い切って「墓じまい」をし、管理の行き届いた近場のコンパクトな霊園や納骨堂へ移すケースや、高齢の方でもお参りしやすい「土地付きの家族墓」など、個人や家族単位のお墓へ建て替える方が着実に増えています。

先祖代々のお墓をしまうことに対し、最初は「ご先祖様に申し訳ない」とためらいや寂しさを感じる方もいらっしゃいます。しかし、お墓の維持・管理に縛られて親族間に負担や溝が生まれてしまっては本末転倒です。

時代とともにお墓の形が変わり、集まる人数がこぢんまりとしたとしても、ご先祖様に感謝を伝え、今を生きる家族の健康を願い合うというシーミーの本来の精神は決して色褪せることはありません。無理のない管理しやすい環境を整え、笑顔で手を合わせる。それこそが、現代に生きる私たちが紡いでいく、新しい沖縄の供養のカタチなのだと思います。

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