沖縄では死後の世界を指す言葉として「後生(グソー)」という言葉があります。
日本でも同じ漢字で「後生(ごしょう)」というものがありますが、この二つは世界観も語源も別物とされているようです。
1.沖縄の「グソー」とは
沖縄でいう「グソー」は、亡くなった祖先が暮らす「あの世」を指します。これは本土で考える浄土である「あの世」やキリスト教の考え方である「天国」とは異なり、地続きの延長線上にある別世界という考えが根底にあります。
海の彼方にあるニライカナイや、洞窟や山の中を通ってつながる異界観、そして先祖が我々家族を常に見守っているというトートーメーやシーミーなどの墓行事などが複合的に合わさり、「死者と生者が密接につながれる場所」というイメージがあるようです。
2.「グソー」の語源
沖縄の「グソー」は、「後生」という言葉から成ったと考えられがちですが、実は複数の民族語と関連すると考えられているようです。
①「隠す(クス)」「隠れ場(クスク)」→「隠れた世界(グソー)」と成ったもの。
沖縄(だけではないとは思いますが)では、「死者は見えない場所に移る」という発想があります。本土でも「亡くなる」という意味で神様や天皇陛下に対して「お隠れになる」という言葉が用いられますね。
沖縄ではこの考えから洞窟・ガマ・森の奥など隠れた場所が他界と結びつき、「隠れた世界(グソー)」が「あの世」と結びついたという見方があります。
②土地・区画を示す語根との関連
沖縄語では「場所=スー」「方角=スー」のような語根が多く残っています。これらと「後(ウシ)」や「下(グス)」の音変化が組み合わさり、向こう側の場所=あの世という意味が形成されたとみる言語学的アプローチもあるようです。
3.なぜ「後生」の漢字が当てられたのか
ここで忘れてはいけないのは、「グソー」が先にあり、後から「後生」の漢字が当てられたということです。
琉球王国時代、漢文はある程度使われていましたが、明治以降の同化政策により行政語彙が本土仕様に統一されました。
その過程で「グソー」に「後生」という意味が近い漢字が当てられたというものです。
ここで「概念は沖縄、漢字表記は本土起源」という状態になりました。
4.仏教用語「後生(ごしょう)」との違い
○仏教の後生(ごしょう)
- 語義は「後の生」=「来世」
- 輪廻思想(前世→現世→来世)の中の次の世
- サンスクリット語「パラローカ(あの世・来世・異界)」に相当
- 浄土系では「極楽往生」が理想。個人の修行・功徳が中心
○沖縄の後生(グソー)
- 輪廻の概念は薄め
- 先祖の世界であり、門中の延長
- 地理的にも近い世界
- 死者=祖霊として家族を守る存在
同じ漢字でも、世界観は全く異なるのです。
5.まとめ
沖縄の「グソー」は琉球固有の祖霊観・他界観の中で生まれた言葉であり、仏教用語の「後生」は輪廻思想に基づいた「来世」の概念です。
同じ漢字で音も似ているので混同されがちですが、両者は全く別の文化体系から生まれているそうです。
「グソー」は「祖霊の国」であり、仏教的「来世」とは異なるという点は沖縄を理解する上で押さえておくといいかもしれません。

ご先祖様へ想いを込めたお墓づくり、墓じまい、お墓の売買などお困りの方はいつでもご連絡ください。